父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。の一章について
本のタイトル長い。。
一章"なぜ、こんなに格差があるのか?"において、
世界を俯瞰したときに発展段階に差があってなぜ一律に発展していないのかという疑問を持ちかけている。
確かに用意ドン!で一斉に発展を進める場合、多少の差はあれどそこまで大きな違いは生まれなかったのかもしれない。
なんなら本編で取り上げているアフリカは、人類の発祥の地であるため、用意ドン!ですらなくアフリカはスタートダッシュを踏めてるはずである。
アフリカ単一起源説…
地球上のヒトの祖先はアフリカで誕生し、そのあと世界中に伝搬していったとする、自然人類学の学説。
そう考えたときになぜヨーロッパがいち早く発展できたのか。なぜアフリカやオーストラリアが遅れをとったのか。
これは本編でも言及しているが、ヨーロッパ人が優れていたからというわけではない。
白人至上主義…
「白人」や「コーカソイド」が他人種よりも優越的であるとの主張
貼り付け元 <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E4%BA%BA%E8%87%B3%E4%B8%8A%E4%B8%BB%E7%BE%A9>
本編において、アフリカとオーストラリアが遅れをとった理由をそれぞれ提示する。
オーストラリアについては農業が発展しなかったからとする。
つまり生活するのに苦労しなかったからと。逆にイギリスなどは天候も悪いから自然に頼ってるだけじゃ生きていけなかった。その背景に農業を発展させた。農業が発展することによって、生活するのに余剰が生まれるようになる。余剰とは余った作物のことで、それは将来への備えであり、余剰は多くのものを生み出したとする。
特定の集団においてみんながそれぞれ余剰を保存するのではなく、一つにまとめたほうが効率がいい。誰がそれだけ保管しているかを記録する必要があるから、文字や貨幣が生まれたといった感じだ。
オーストラリアはなんもしなくても食い物に困らなかったから、特に農業を発展させるモチベーションがなかった。
一方アフリカは大陸の形が農業を発展させるのに不利だったからだとしている。
ユーラシア大陸は横に長くて、アフリカは縦に長い。
アフリカは南北で気候が全然違う。熱帯や砂漠など極端な気候も多い。
そのため農業を発展させた地域があったとしても、それを展開しにくかったとする。一方でユーラシアは横に長いため気候がほとんど同じ。特定の地域で発展した農業を横展開しやすかった。
といった感じで発展の違いをその土地の環境(自然や大陸の形)に原因があったとしている。
ここで、疑問が生じる。
土地の環境が発展の差異を既定するなら、アメリカも横に長いし、気候も緯度的にヨーロッパと近いはず。アメリカが1800年ほどまで歴史上に現れないのが説明つかない。
また、古代文明の説明もできない。メソポタミアはアフリカ近くの地中海あたりで発展を遂げている。インカ文明も縦に長く発展を遂げているし、なんなら緯度もアフリカと変わらないだろう。
ここで"政治の起源 著フランシス・フクヤマ"を参照したい。
ある自由な部族社会が、侵略の脅威がすぐそこまで迫っているときや、外部からの侵略者たちによって全滅させられる大きな危険にさらされるときに、権威を一人の独裁者に任せる様子を私たちは想像できる。または、疫病が蔓延し、部族社会が消滅する危機に瀕し、一人の宗教的な指導者に権威を委任する様子もまた想像可能だ。(中略)こうなると、国家の形成を真に促したのは暴力、もしくは暴力の脅威ということになる。
つまり、自由に部族社会で生きていた人間が一つの国家を形成するのには生活に危機がせまる条件が必要ということになる。
ただそれだけでは上記で出てきた疑問を解決できない。
つまりアフリカやオーストラリアは暴力が発生しなかった?暴力が発生しても国家形成に至るほどの生活に危機が迫らなかったのか。
もう少し"政治の起源 著フランシス・フクヤマ"の書を読み進めると以下文章にぶちあたる。
政治学者ジェフリー・ハープストはアフリカの多くの地域で土着の国家が発生しなかったのはいくつかの要因が合わさったことによると主張している。彼は次のように書いている。「植民地の王や総督であろうと、独立後の大統領であろうとアフリカで国家を建設しようとする者が直面する根本的な問題は、人口が比較的密集していない荒れ果てた領域で権威を行使しなければならないことだ」。
つまりどんだけ農業が発達しようが、ある程度の人口密集でないと国家形成に至らなかったとしている。たしかにアフリカやオーストラリア、アメリカは地図を改めて確認する必要がないほどに広大な土地があった。特異的に大地溝帯のような大陸において人口密度の高い場所ではアフリカにおいても国家がはやい段階で出現したとしている。
結論、一章において農業の発展が国家形成、発展において必要条件だが、十分条件ではない。農業の発展に加えて、最初の発展段階においては、一定の人口密度になるような地理的制約が必要であったといえるのではないか。