【書評】ポピュリズムとはなにか

 

一言でまとめるなら、なんかよくわからない危なっかしい運動(トランプ旋風とか国民戦線とかEU離脱とか)がなんでこんなに国内外問わず同時多発的に起こっているのだろうと疑問に思う人に読んでほしいです。少しnewsweekとか`ロイター、BCCとかを見るのが楽しくなります。


以下、少し丁寧に。
作者は水島治郎という方で、現在千葉大学政経学部教授をしております。彼はこの本で2017年第38回石橋湛山賞受賞してます。

オランダ政治史を専門としており、昨今のオランダにおけるオランダ自由党フォルタインなどの台頭、他国(米国、英国、日本など)においても同様の事象が発生していることを感じたため、ポピュリズムを包括的に取り上げる必要性を感じ、この本を執筆したようです。

おおまかな構成は以下のとおりです。
第1章にて、ポピュリズムやデモクラシーの定義、ポピュリズムのデモクラシーへの影響、対処法など通説の展開。
第2章から第6章は具体的な事例(米国、英国、日本、アルゼンチン、スイス、オランダなど多岐にわたる)の例示。
最終章である7章で各事象の共通項から現代のポピュリズムについて特徴の整理。
全体的に非常に論理構成が明確で、難しいのに読みやすいです。
特に1章と7章が楽しいです。間の個別事例はその国とかに詳しければもっと楽しいんだろうなという感じました。


特に一番楽しかったのは、
イスラム・反移民を訴える党とその支持者はリベラル(自由主義、男女平等)を掲げているという点でした。彼らはリベラルではないイスラムを排除するというロジックです。リベラル的な思想において、リベラルではないという自由を許容しないというある種の自己矛盾を内在化しているということを意味していると思います。
この点においてポピュリズムの奇妙さを見るのだなと納得しました。


ポピュリズムに対する態度を改めて自分に問いただしたい人におすすめです。